大阪南視覚支援学校 柔道の取り組み

毎年開催している全日本視覚障害者学生柔道大会や、全日本視覚障害者柔道大会で、多くの競技者を輩出している学校で、公立学校で唯一柔道整復科が設置されている大阪府立大阪南支援学校(学校HPへリンク)、郡司弘子校長にお話を伺いました。

大阪府立大阪南支援学校 郡司弘子校長

―貴校での柔道の取り組みについて教えてください。
・以前は、全国盲学校柔道大会も行われていたほど、全国の盲学校で盛んに取り組まれていましたが近年では、他の視覚支援学校と同様に本校でも生徒数が減少しています。 部活動としては残っていますが盛んとまでは言えず、柔道整復科の授業を中心に取り組んでいる状況です。
・また、柔道は、中学校・高校の保健体育科の授業の「武道」の種目として取り入れ、寝技などの実技を体験し、柔道の精神などの指導を行っています。

―柔道の授業はどのように行われているでしょうか?
・柔道整復科の柔道の授業については、現在は50分授業を連続で2コマ行う形で実施しています。 生徒の運動経験や年齢に配慮して、安全に取り組めるようにしています。 柔軟体操や基礎体力作りを中心として、礼法・受け身・柔道の形(かた)など、柔道の基本となる部分を大事にしています。
・見えない・見えにくい生徒が学んでいますので、個々の眼の状況を含む健康面や体力面を十分に考慮するほかに、複数指導(有段者)の体制で行っています。

広い柔道場

―柔道を指導できる先生方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?
・中学や高校の保健体育でも柔道を扱うことはあるため、保健体育の免許を持った教員は指導が可能です。
・本校の柔道整復科所属の教員の中には、柔道整復師の免許と保健体育の免許や理療の免許を持っている教員が複数おり、柔道初段から6段までの有段者が複数で指導しています。 競技者育成や競技者のレベルアップのための柔道指導者となると、本校でも少数です。

―柔道整復科に所属していない生徒が柔道をしますか?
・中学部や高等部の生徒が保健体育の授業で取り組みますが、近年は、全国盲学校の大会種目であるフロアバレーボールのような団体スポーツに取り組む傾向があります。
・柔道経験のある生徒は、生涯スポーツとして「柔道」に取り組むこともありますが、未経験者が取り組むことは少ないのが現状です。

―柔道の授業を行われているメリットは感じられていますでしょうか?
・視覚に障がいのある方は、見えない・見えづらいことから、行動範囲が狭くなりがちだったり、運動不足になりやすかったりという傾向があります。 柔道に限らず、体を動かすことは非常に重要で、運動をする機会という意味で、代表的な視覚障がいスポーツの一つとして「柔道」を捉えています。
・また、柔道に取り組むうえで、技を身につける、勝敗を競うことも大切ですが、相手を尊重する心、「礼」に代表される伝統的な考え方などを理解すること、相手の動きに応じて対応する中で相手を尊重する態度を育むこと、自己の責任を果たそうとする意識をもつことができることなども、学べることがメリットと考えています。
・そして、柔道をとおして、礼に始まり礼に終わるという礼節や、融和協調、自他共栄の精神を体感し、身に着けることは、卒業後に医療に関わる者として生かせることだと思っています。